日本の子供たちは世界で最も睡眠不足。高野口のパイル織物メーカーとして「子供には子供のブランケット」の開発をしています。気持ちよく熟睡するための素材について説明します。早寝の習慣で元気に!寝る子は育ちます。
子供には子供のブランケット
最近、厚生労働省や文部科学省などの調査を経て子供の睡眠不足と、それによる健康への影響が憂慮される状況であるとわかり、教育関連、医療等から改善に向けての取り組みが少しずつ進みはじめました。そのなかでは子供は睡眠の特徴が大人と違うこと、そして子供が気持ちよく十分な睡眠時間をとるために夜、眠る場所の環境にも留意すべきであると、医師や研究者が提唱しています。
睡眠環境をつくっている要素は、温度、湿度、明るさ、空気のきれいさ、音、香り、寝具など、たくさんあります。子供用寝具の機能性や素材について、大人はあまり重要視していないかもしれません。が、実は身体の近くにあるモノとして意外と睡眠と密接に関係しているのです。掛け寝具は保温性と吸湿・放湿性、軽さ、ドレープ性に、敷き寝具は柔らかさやスペースなどに留意して選ぶように言われています
高野口は歴史あるパイル織ブランケットの産地であり、子供が気持ちよく熟睡できるにはどんなモノが望ましいかを模索してきました。ブランケットは単独で使うだけでなく、季節や室温に応じて掛け布団に足したり引いたりする調節寝具の役割を持っているので、掛け寝具としては一年を通して使う機会が多い=つまり子供と関わる時間が長いものです。
ぜひ「子供には子供のブランケット」を!できるだけ子供の眠りの特徴にあった素材や織り方のものを選び、睡眠環境をより良くしてほしいと考えています。
子供用ブランケットに適した素材とは
一般的にブランケットに使われる素材は天然繊維では綿、麻、ウール、シルク。化学繊維ではアクリル、ポリエステルなどがあります。子供用としては、繊維が持つ特徴や機能から「綿」が適していると考えられます。また、ポリエステルと組み合わせて織ると、丈夫さと乾きやすさが増すので扱いやすくなります。綿が適している詳しい理由は以下の通り。
吸湿・放湿性が高い
子供は眠っている時、特に頭から背中にかけて、たくさん汗をかきますが、それには子供特有の理由があります。人は昼のあいだ体内に熱を溜め、入眠時に放熱し体温を調節します。しかし子供はこのような体温調節機能が発達の途中なのでうまくできず、たくさん汗をかくことで体温を下げ、脳のオーバーヒートを防いでいるのです。そして汗の吸湿・放湿がしっかりできないと、寝具と体の間の湿度が高くなり(つまり、蒸れる)不快感が生じ、熟睡を妨げる要因となるのです。綿は吸・放湿性が高いので蒸れの不快感を軽減してくれます。
子供は体温が高いので、大人と同じ室温や寝具では暑く感じることがあるので注意が必要です。冬は肩と首をしっかり保温しながらも通気性があるので暖まりすぎず、夏は寝冷えを防ぐ程度に保温する…一年を通して使えてコスパも良いかも。
ほど良い保温性と通気性がある
子供は体温が高いので、大人と同じ室温や寝具では暑く感じることがあるので注意が必要です。冬は肩と首をしっかり保温しながらも通気性があるので暖まりすぎず、夏は寝冷えを防ぐ程度に保温する…一年を通して使えてコスパも良いかもしれません。
丈夫で扱いやすい
ブランケットに付いた汗や皮脂をそのままにしておくのはNG、こまめに洗って清潔を保って下さい。綿織物は家庭用の洗濯機で丸洗いでき、乾きやすいので扱いが簡単です。メンテナンスのストレスを少し軽くできるのでは?
繊維が柔らかく肌当たりが優しい
子供の肌はデリケートなので、なるべくチクチクしない肌当たりの柔らかいものが良いでしょう。また柔らかいものに触れていると安心する子供もいるようです。
軽くてドレープ性があるものを・・・
ブランケットの軽さは睡眠の質を左右します。
一般的に、人は一晩に約20回の寝返りを繰り返すと言われています。寝返りは、体の重みで圧迫されている部分を解放して血流を良くしたり、暖まり過ぎたり蒸れを感じた時に、寝具と身体の間の空気を逃して調整する役割があります。ブランケットが重いと寝返りがしにくくなり快眠を妨げかねません。
また、身体と寝具の間の暖かさを逃さないために、ドレープ性(身体に添いやすい柔らかさ)も求められます。ただ、ブランケットの場合は柔らかすぎると身体に纏わりついて寝返りが打ちにくくなることも…。子供はコロコロとよく寝返りをうつので(布団の外に出てしまうことも多いですが)軽くて適度なドレープ性が必要です。
米阪パイル織物では子供が気持ちよく熟睡できるように、綿素材中心のパイル織ブランケット『マユ ケット』を開発しました。名前の由来でもあるマユ(繭)のようなポコポコした形状が作り出す、ほどよい保温性と絶妙なドレープ性が他にはない特長です。たんぽぽの綿毛のように軽く柔らかいパイル(毛羽)は抜けにくい織り方をしているので、安心して使って頂けます。一般的に真っ赤や黒のような強烈な色味は、眠る前に見ると刺激が強いといわれるので、家族一緒に使って楽しめるような楽しく優しい4配色を揃えました。
日本の子供は世界トップクラスの睡眠不足
「うちの子、布団に入ってスマホを2時間くらい見ている。朝は眠いから、なかなか起きてこない、起こすのがタイヘン!」「ぐずって眠ってくれず、夜中まで起きていたみたい。私の方が先に寝落ちした」と嘆いているお母さんが結構多いのではないでしょうか。
日本の子供は、発育期に世界で最も眠っていないと言われています。夜10時以降に就寝する3才児が50%を超え、小中学生の「増やしたい時間」のトップが睡眠時間、そして朝から眠い、居眠りをするという実態が報告されています。子供は放っておいてもよく眠るもの、ではありません。本当は日本の大人たちと同様で、かなりの睡眠不足状態なのです。その原因は、ここ数十年のうちに進んだ24時間活動している都市型化社会の影響が大きいとされています。
夜遅くまで働く、あるいは起きている大人の時間に子供が引っ張られる。学校が終わっても習い事、塾で夕食が遅くなり、眠る直前までスマホやゲームを手放せず、脳が興奮状態で眠れなくなる。でも次の日は幼稚園や学校に行く時間に合わせて起きねばならず、その結果、充分な睡眠時間がとれず午前中から居眠りする子供が増えているのだとか・・・発育期の子供たちの健康を考えると、楽観視できないと思われます。
眠ることは楽しい♪ 早寝して元気になろう
睡眠環境を作る要素に「光」があります。専門家によるとテレビやパソコン、スマートフォンの光は眠れない原因になるので寝る直前に見るのは避けるべきだそうです。そして気分が乗って夢中になるゲームもNG。でも子供には楽しいことなので、なかなか止めようとはしないでしょう。そもそもヒトにとって眠りは楽しく気持ちのよいことです。テレビやゲームよりも、眠る方が楽しくなれば遅寝の解消につながるかもしれません。例えば、幼児期は大人が一緒にいて背中を優しく「トントン」する、お布団に入ったら子供に本を読んであげる「寝かしつけ」をする。少し大きくなったら、お気に入りの縫いぐるみや人形、おもちゃと一緒に布団に入る、パジャマや寝具を子供の好きなものにする、などです。眠るスペースが安心で楽しい場所になるように、身近な材料(ダンボールや布etc)で秘密基地やお城を親子で作るのも良いかもしれません。眠る前に家族やテレビに「お休み」を言う、お風呂に入る(温度に注意)を習慣付ける「入眠儀式」という方法もあるそうです。今どきのお母さん、お父さんは忙しくて夜は疲れていると思いますが、子供の健康のために生活習慣を見直し、少しずつ就寝時間を早めるよう手伝ってあげて欲しいと思います。
「寝る子は育つ」は本当?まずは知ることから
昔から言われる「寝る子は育つ」は本当です。子供の睡眠不足を解消するには、なぜ子供にとって眠りが大切なのか、眠りの意義や睡眠不足がもたらす影響を知ることから始めるのも一つの方法です。近年、脳科学とともに睡眠についての科学的な研究が進んできました。医学や脳生理学・睡眠科学の専門家が、広く一般の人にも知って欲しいと願って分かりやすく書かれた本がありますので参考まで、その一部をご紹介します。詳しく知りたい方はぜひ、ご覧ください。
『眠りで育つ子どもの力』著者;白川 修一郎 (東京書籍)
『寝ないとドジるよ、アブナイよ!』著者;神山 潤 (芽ばえ社)
『子どもの睡眠 ― 眠りは脳と心の栄養』著者;神山 潤 (芽ばえ社)
『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』 著者;成田 奈緒子、上岡 勇二(産業編集センター)