【豆知識】ブランケットに使われる繊維②: 綿の魅力とその理由

raw cotton

ブランケットに使われる繊維=今回は「綿」について、特徴や優れている理由、産地や歴史など、その魅力をお伝えします。季節や体質、ライフスタイルに合うブランケットを選ぶために役立つ情報です!

目次

2,綿とは?

Various cotton products

綿は衣服、タオル、寝具、敷物etc…私たちの身の回りをざっと見渡しただけでも本当に沢山の製品に使われています。もはや綿がない生活なんて、ちょっと想像できませんよね。身近すぎて知っているつもりでも、特徴や産地、歴史のことまで想いを馳せることは、あまりないかもしれません。

パイル織は糸をさばいて繊維そのものを活かす作り方なので、綿の良さがダイレクトに伝わる織物です。米阪パイル織物では物理的な特徴だけでなく、綿をよく知り魅力を感じるがゆえ、綿にこだわってブランケットを製作しています。たくさんの人にその魅力を伝えたいと考えています。

魅力ある特徴

・適度な強度があり、丈夫で長く使える

・水に濡れると強度が増すので洗濯に耐える

・よく水を吸うので、吸水・吸湿性を求められる用途に適している

・染料の付きが比較的よく、美しい発色が得られる

・柔らかく、さらっとした感触で肌触りが良い

・夏は涼しく、冬は保温性に富みあたたかい

・耐熱性が大きく、アイロンがけが安心

・土に返る

人類と共にある繊維だけあって、人に寄り添っている素晴らしい素材だといえるのではないでしょうか。近年の日本の気候は、冬はしっかり寒く夏は亜熱帯のような高温多湿。そのうえ何かとストレスが多い時代ですから、ますます心身に優しい綿の必要性が高まることでしょう。

魅力の理由は?

綿はアオイ科の高さが1メートルほどの植物。種子を守る役割を持つ、白いフワフワとした「種子毛(しゅしもう)」が綿繊維になります。
この「種子毛」が白い花のように見えることから綿花(めんか)またはコットンボールと呼ばれてます。綿花を繊維と種子に分け、いくつもの工程を経て糸となります。
先述のように、たいへん素晴らしい魅力が詰まったものですが、その理由は構造にあると言えるでしょう。

Process until cotton products are made

理由その1・・・繊維の中心部分がマカロニのような空洞(中空構造)

空洞の空気によって断熱効果が生まれ、冬でも体温を逃さず温かさを保ちます。また、空洞にたっぷりと水分を貯めるので、吸水性、吸湿性も高くなります。

反面、ポリエステルや麻に比べると乾燥には時間がかかりますが、たくさん吸水するがゆえ、やむを得ないことですね。
夏のTシャツに綿素材が多いのは、繊維が水分を発散するときに気化熱が発生し温度を下げるから。綿は一年中使える万能選手と言えるでしょう。

理由その2・・・繊維に天然の撚りがかかっている

繊維自体にゆるい撚り(ねじれ)によって繊維の間に空間がつくられます。そこに空気がたっぷり含まれるので、通気性もありながら保温性が得られます。

さらに繊維どうしが絡みやすため、強度の高い糸ができます。

理由その3・・・繊維の先端が丸い

綿の断面を見ても全体に丸みがあるのですが、繊維の先端の形状が丸いため、チクチクしない、優しい肌触りが得られるのです。

繊維の直径は太いもので0.02㎜程度とほんとうに繊細です。そこにある複雑な構造は本来、全て種子を守るために自然に備わったもの。それが人の肌を守り、心地よさを与えてくれているのですから、なんともありがたく大切にしなければと感じますね。

Structure of cotton fiber

3,綿の歴史と日本人

綿の原産地は中南米、インド。約7500年前から栽培が始まったとされ、現在のパキスタンにあるインダス文明の都市遺跡・モヘンジョ・ダロからは約4500年前の綿布が発見されました。(パキスタンは現在も主要産地の一つです)

日本に種が伝わったのは7世紀~8世紀ごろ(諸説あり)。本格的に栽培が始まったのは15世紀(1400年代)以降です。温暖な西日本を中心に広がり、やがて江戸時代には綿花生産量が増え、綿織物業が盛んになり庶民も使う身近な布となったのです。会津木綿、三河木綿、河内木綿、播州織、高島ちぢみ、江戸後期に発達した久留米絣など、枚挙にいとまがないくらい産地がありました。
これらの産地では現代でも使われる綿織物や独特な縞や格子柄、文様が開発され、名産品が生まれます。
また、有名な岡山県の帆布やデニムは、江戸時代に干拓地が広がったおかげで、綿花が豊富に手に入るようになり、太い糸を使った厚くて丈夫な織物製作が可能になったそうです。

一方、東北、北陸などの寒い地域では綿の栽培が難しく、大変貴重なものでした。そのため庶民は綿の着物を着ることを禁じられ、藩が奨励した麻布を着るしかありませんでした。麻は風を通すので寒さを防いではくれません。そこで保温性がある綿糸を麻の布目に通し、少しでも温かくする工夫をしました。同時に強度も増すので一石二鳥。これが「こぎん刺し」「こぎん」です。それぞれ地域ごとで美しさを競うように、或いはこぎんを見ればどの地域の人かが分かるように、様々な文様が生まれました。

このように綿は、日本人にとって最も親しまれる繊維となり、暮らしだけでなく染織文化にも非常に大きい影響を与えたのです。現在、国内での栽培は殆んど行われていませんが、東日本大震災の後、津波によって稲作が出来なくなった地域で、塩害に強い綿の性質を活かして栽培がすすめられています。いつか日本産コットンのブランケットが出来るといいですね。

History of Cotton in Japan

4,綿の種類と産地

Cotton productions around the world

綿はアオイ科ゴシピウム(ワタ)属の植物。温帯では一年草で4月に種をまき10月に収穫。育成には平均気温23~25℃程度の水はけが良く肥沃で、日光が充分に当たる土地が適しています。現在、世界の約90か国で栽培されており、その産地、品種、農家の技術、栽培方法などによって「個性」が変わります。

綿花生産量の1位はインド、2位 中国、3位アメリカ(2021年)。ブラジルやパキスタンも主要な生産国です。

「個性」とは繊維の長さ、直径(太さ)、強度、色や光沢、触感などのこと。

まず、長さで分けられます。

・短綿(21㎜まで)

・中綿(21㎜以上~28㎜まで)

・長綿(28以上~35㎜まで)

・超長綿(35㎜以上)

個性豊かな綿を一部ですがご紹介します。

超長綿・長綿

・シーアイランドコットン(海島綿)

ジャマイカを中心とするカリブ海周辺地域で採れる最高品質クラスの超長綿(繊維長は約45㎜)。直径は0.0125㎜程度。細くて強い、繊維の表面に凸凹や毛羽が少ないため「絹のような光沢、カシミヤのような柔らかさ」と言われる。生産量が非常に少ない「幻のコットン」であり、世界3大綿のギザ綿、ピマ綿、新疆綿の原種でもある。

・エジプト綿

ナイル川流域ギザで栽培され「ギザ綿」ともいわれる。特に「ギザ88」という品種は超長綿は繊維長が38㎜ほどある高品質で稀少なもの。直径は0.018㎜程度で白く光沢があり滑らか。

・新疆綿(しんきょうめん)

中国は世界第2位の綿花生産国。新疆ウイグル自治区では、その80~90%を生産。超長綿で白く光沢があり強く、品質は高く評価されている。世界3大綿の一つであり、日本人にとって最も身近な綿のひとつ。

・スーピマコットン

最高級ランクに分類される、超長綿繊維。産地はアメリカ合衆国カリフォルニア州やアリゾナ州、テキサス州、ニューメキシコ州に限られる。中国の綿に比べ油分が少ないのでドライな感触が特徴。
日本ではSuperior Pimaを略して呼ばれている。ピマ綿の高級タイプという意味。
ユニクロや今治タオルなどで用いられ認知度が上がった。

中綿(生産の多くは中綿

インド綿

インド国内各地で栽培される綿。多くは繊維長は28㎜程度で中くらいの長さ   白~褐色で直径は0.02㎜で太い糸を作るのに用いられることが多い。
インド綿のラグは夏のインテリアファブリックとして好まれる。 

・ブラジル綿

北部、中部の高地では繊維長22~28㎜、南部では繊維長32~35㎜のものが栽培されている。ブラジルの綿栽培には移住した日本人が大いに貢献したという。

5,オーガニックコットンについて

オーガニックコットンとは

オーガニックコットンは、オーガニック農産物等の生産方法についての基準に従って2 ~ 3 年以上のオーガニック農産物等の生産の実践を経て、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことです。(NPO法人オーガニックコットン協会HPより)
また製品の全製造工程でも化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑え、社会的規範を守って作られたものがオーガニックコットン製品と認められています。

特徴は?一般の綿との違い

綿の構造に違いはないですが、きめ細かい管理と非常な手間をかけて育成された綿花です。また、ガイドラインに基づき様々な義務が課せられるため生産者が少なく、稀少で高価なものになります。

製品になる全行程でも化学処理は最小限なので、綿本来の性質が活きています。(普通の綿は薬品の作用で表面の組織が傷みます)

・頬ずりしたくなるような柔らかさ、やさしい肌触り
・紫外線のカット効果が高い(特に茶綿は90%以上)

オーガニックコットンの背景

綿花栽培には殺虫剤、落葉材、除草剤など大量の農薬が使われます。1990年代のピーク時は殺虫剤使用量が世界全体の使用量の約20%を占め、土壌汚染だけでなく自然環境全体に影響が広がりました。

さらに灌漑用に大量の地下水が汲み上げられ、やがて枯渇するという大問題も発生しています。

また、糸にする工程でも、効率をあげるためには化学薬品に頼らざるをえません。

生産の多くは発展途上国で、環境と農家や綿産業に従事する人たちの生活と身体へのダメージは深刻なものになりました。

オーガニックコットン栽培は、このような環境、状況を改善することを目標として始まったものでした。綿は人の一生において、もっとも多く使う素材かもしれません。私たちがその背景に起こっている問題に関心を持つことも少しは改善につながるのではないでしょうか。

5,綿の魅力とパイル織ブランケット:まとめ

cotton blanket

米阪パイル織物では綿を中心としたブランケットの開発を進めています。

(マユケット、フワケット、カルケットなど➡https://yyypile.com/products/

綿は繊維の中に、そして繊維同士の間にも空気を含むため、温かく通気性がよい織物が出来ます。パイル織の毛羽は糸の状態ではなく、繊維の状態で立ち上がっているので他の織物と比べると、そういった繊維の特性がよく活かされている織物だといえるのです。

そして、日本の気候や室内環境、日本人の繊細な肌質、ストレスフルな社会生活など色んな方向から検討しても、やはりパイル織りブランケットと柔らかい綿の相性はピッタリという結論に到達します。

高野口の織物のルーツは綿織物です。

私たちは、これからも綿の魅力を十分に活かして「いつも何かが新しい」ブランケットをお届けしてまいります。

raw cotton

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